無銭旅_ 多摩・一ノ宮万平

安政五年九月十五日

こんどの旅は奇行といっていい。無銭旅なのだ。
ーむかしの剣客というもんは、乞食をしながら武者修行したもんじゃ。
「夜道とは驚きましたね」寝待の藤兵衛は、ひたひたとついてくる。
「土佐まで付いてくる気か」「家来ですからね」

六郷の渡しで夜があけた。渡し賃一人十三文それさえ持っていない。
「この大川をどうやって渡るんでさ」「泳ぐさ」


横に武士がいる。装束、大小とも立派だが、友を連れていない。
「旦那、あの侍大金を持ってますぜ」「わしが無一文でも人の懐は狙わん」「あそこの子目下ぶりが狙ってます」なるほど、虚無僧が二人いる。

「率爾(そつじ)どすが、お人柄とお見受けしてお願いもうすんどすが、京までの道中、ご同行願えまへんやろか」
「どうぞ」相手は、何か事情があるらしく、名乗らない。

が、竜馬は空腹だった。程ヶ谷で昼になった。
「どうどす。この辺りで昼を済ませてしまいましょう」
「・・・そうですな」龍馬は煮え切らない」
「かましまへん。それがし、余分の路用がござります」
餅が出た。竜馬は情けなくなった。餅で用心棒に雇われた。

memo 一ノ宮万平

歌舞伎「慶應水滸伝」の実在モデルの杉本万平・通称 一ノ宮万平は、安永8年(1779)生~文久3年(1863)没]一ノ宮村(現多摩市一ノ宮)にいた任侠。

多摩市・真明寺には、万平地蔵が祀られている。
『多摩市の石仏』 によると、幕末の一宮(宮村)の侠客杉本万平が自らの手であやめた多くの犠牲者の菩提を弔うためにこれを建てたそうです。