幕末の女性

(不幸だな)と、竜馬はおもった。
乙女の鬱屈が、であった。それほどの自分をかかえて、いささかもその自分を行動で表現することなく、実家の奥の一室でむなしく歳月を消費しつづけてゆかねばならないのはよほどつらいことにちがいない。

竜馬が行く8  P12