土佐藩

岩崎弥太郎

安政四年十月十日 土佐安芸郡に井ノ口村という村がある。 「室戸へ行くなら、途中、岩崎弥次郎、弥太郎の様子を見舞ってやれ」と権平が言った。 地下浪人の岩崎家とは薄い縁に繋がっているらしい。地下浪人とは土佐にある武士の一種で郷士がその株を他人に...
徳川幕府

新撰組と遇う 藤堂平助

制服の羽織を着用している。浅黄地のそでにだんだらを染めぬいたもので、ちょっと芝居の赤穂浪士の討ち入りの服装に似ている。(ははあ、これがいま洛中に有名な新撰組の壮士団か)と思ううち、隊が竜馬の前にとまった。一人が、提灯を竜馬の顔あたりまでもっ...
徳川幕府

吉田稔麿

稔麿は、元結を結び始めた。が、ふしぎと三度結び、三度とも切れて四度めにやっと結べた。(おかしいな)と、乃美老人はだまってみている。「今宵、池田屋へ行くのをやめたらどうだ。元結が三度も切れるとは、不吉ではないか」「行きます」竜馬がゆく5 P8...
浪人浮浪雲

掛川の宿 清水次郎長

富士の見える街道筋に泊まりを重ねてやがて太田摂津守の城下町掛川にはいった。 近隣の村に秋祭りの祭囃子が聞こえる。 「播磨介さま。チクと見にゆきませんか」 用心深い播磨介もここ一両日例の虚無僧を見ていないので、つい竜馬の誘いに腰を上げた。 「...
浪人浮浪雲

時雨蛤みやげにしやさんせ_次郎長一家の窮地

その後竜馬は、夜旅を避け用心した。播磨介も、すっかりこの護衛には感謝して、「坂本殿。このご恩は忘れませぬぞ」と、何度もいった。「なに、礼などいわれると」竜馬は嬉しそうに恐縮している。桑名 松平越中守の城下町である。旅籠の亭主が「ただいま、当...
浪人浮浪雲

四日市_黒駒勝蔵

竜馬が目覚めた時には、すでに陽も高くなっていた。 (しまった) 旅館に戻ってみると宿の女主人が 「あんたさんどこへ行っておいでやすかえ。おつれさん、もし帰れば大急ぎで後を追ってくれと申し伝えてくれと、申されて」 「わかった」 竜馬は往来に出...