竜馬がゆく六本矢車_家紋 嘉永六年三月二十六日その時、カラリと障子があいた。武士が立っていた。お登勢は気づかぬふりをして、竜馬を相手にたわいのない話をした。「失礼をした」障子を閉め姿を消した。(おかしな野郎だな)「六本矢車は、人間を斬った顔だよ。眼でわかる」と藤兵衛...1853.03.26竜馬がゆく
竜馬がゆく伏見寺田屋_女酒 嘉永六年三月二十五日日が傾いた頃、船は伏見についた。龍馬が荷物をまとめていると、寝待の藤兵衛からしきりと世話を焼いて、「旦那、伏見のとまりはどこになさいます。」もう人前だから、お店者の言葉になっている。「そうだな。別に当ては、ないな。」「で...1853.03.25竜馬がゆく
土佐藩高麗橋_岡田以蔵 嘉永六年三月二十四日暗い。提灯を持たない竜馬は、橋の欄干に身をすり寄せるように歩いた。「おい」と声を殺して呼びかけたものがある。あっと竜馬は前へ飛んだ。はかまの裾が切り裂かれたのが、足の感触でわかった。龍馬は、じりじりとさがって、橋のたもと...1853.03.24土佐藩竜馬がゆく
竜馬がゆく鳴門海峡 嘉永六年三月二十二日-船が出たのは、翌る未明である。お田鶴さまは、胴の間の一角を定紋入りの幕でかこんだ籍に入った。「竜馬どのも、ここにいらせられますように」とお田鶴さまは声をかけてくれたが、竜馬は「いや」といったきり、船の上に出てしまった。...1853.03.22竜馬がゆく
竜馬がゆく岡崎の浦 嘉永六年三月二十一日客引きの女中に袖を引かれるまま、竜馬は鳴門屋という船宿の軒をくぐった。「酒をくれ、俺はこの部屋だ」決めてしまっている。「おこお部屋は、もうすぐ着くお客様のお部屋でございます。お願いしてみますので、こちらで相席はいかがでし...1853.03.21竜馬がゆく
竜馬がゆく大歩危 嘉永六年三月十九日土佐の高知から江戸までの里程は、山河、海上をあわせて三百里はある。まず、旅人たちは、四国山脈の峻険を踏み越えなければ成らなかった、ー 見送りは、領石まで。というのが、城下の習慣だった。親兄弟は、送らない。親戚、知人、ざっと...1853.03.19竜馬がゆく