竜馬がゆく

竜馬がゆく

そのおつむ、どうなされたの_長州藩2

嘉永七年二月二十日 竜馬が桶町の道場に戻ったのは、幕府が下田、函館の両港を開くことに決定し、ペリーに回答した二月末になってからである。 ひさしぶりに道場に戻った竜馬は、貞吉先生に挨拶するため、道場から中庭におりたとき、さな子とすれ違った。 ...
竜馬がゆく

顔を貸せと言うのかね

嘉永六年十月二十日 江戸の秋が、一段と深まった。 その日、千葉道場で稽古が終わった後、重太郎が銚子の門弟から酒が届いたと言うので二人で飲み始めた。龍馬は二升ばかり飲み、気がついてみると日が暮れていた。 「いかん、門限じゃ」笑い声を残して出て...
竜馬がゆく

お冴

嘉永六年八月廿二日 竜馬は金を藤兵衛に預け、二人で「よしや」という家に上がった。部屋は二階で、藤兵衛はなかなか上がってこない。竜馬が寝転がると、足下のふすまが開いた。 女はいかにも法にかなった所作でふすまを立てると 「冴ともうしまする」 「...
土佐藩

あぎ

嘉永六年四月十七日 竜馬は江戸に入ると、まっすぐに内桜田の鍛冶場御門へゆき、土佐藩下屋敷で草鞋を脱いだ。藩邸ではよく心得ていて、泊まるべき長屋に案内してくれた。 相住まいの者が一人いると言う。見回してみると、掃除が行き届いている。こう言う相...
竜馬がゆく

六本矢車_家紋

嘉永六年三月二十六日 その時、カラリと障子があいた。武士が立っていた。お登勢は気づかぬふりをして、竜馬を相手にたわいのない話をした。 「失礼をした」障子を閉め姿を消した。 (おかしな野郎だな) 「六本矢車は、人間を斬った顔だよ。眼でわかる」...
竜馬がゆく

岡崎の浦

嘉永六年三月二十一日 客引きの女中に袖を引かれるまま、竜馬は鳴門屋という船宿の軒をくぐった。 「酒をくれ、俺はこの部屋だ」決めてしまっている。 「おこお部屋は、もうすぐ着くお客様のお部屋でございます。お願いしてみますので、こちらで相席はいか...