竜馬がゆく

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八相の構え

嘉永六年五月二十一日 前将軍の祥月命日は道場は休む習慣になっており、家の者は外出中。構わず稽古に来た竜馬にさな子は、「お相手申し上げてよろしいでしょうか」と問い、竜馬は 「あぁ、防具をつけなさい」 竜馬は、竹刀を中段にとった。 さな子は、左...
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鳴門海峡

嘉永六年三月二十二日 -船が出たのは、翌る未明である。 お田鶴さまは、胴の間の一角を定紋入りの幕でかこんだ籍に入った。 「竜馬どのも、ここにいらせられますように」 とお田鶴さまは声をかけてくれたが、竜馬は 「いや」といったきり、船の上に出て...
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出立〜からたちのまじない〜

嘉永六年三月十七日 当時、土佐の高知城下では、家の者が旅にたつとき、奇妙なまじないをする。これを、 からたちのまじない というのだ。いつの頃から、はじまったものかはわからない。道中、苦難なことが多いために、ふたたび家郷へ生きて帰ることを祈る...
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大歩危

土佐の高知から江戸までの里程は、山河、海上をあわせて三百里はある。まず、旅人たちは、四国山脈の峻険を踏み越えなければ成らなかった、ー 見送りは、領石まで。というのが、城下の習慣だった。親兄弟は、送らない。親戚、知人、ざっと20人ばかりが領石...