浪人浮浪雲

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亀山_祐天仙之助

小間物屋赤蔵が旅籠大和屋に入って播磨介を尋ねると、その方は泊まっていないという。 「旦那、変事があったのかもしれません」「そんなことはなかろう」「お城下の新町に兄貴分の水屋伊助までご足労を」「赤蔵、この伊助も盗賊か」「めっそうもない。若い頃...
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河合橋_森の石松_伯山

播磨介らしい人物が、死んでいる。 竜馬は街道を東に走って十丁。「この橋の真下でございます」(死んだか)「旦那、灯を」「照らしてくれ。おい、ちがうな。播磨介殿ではない」(例の彦根の侍だな)藤兵衛の短刀をひきぬいた。 このあたりでぐずぐずしてい...
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江州水口宿 大前田栄五郎

江州水口宿に入った時は、陽もだいぶ傾いていた。水原播磨介の人相を説明し、尋ねるとーそれはあてとこです。と、いちばんおとなしそうな客引き女がいった。番頭の案内で部屋に通された時に、播磨介は、喜んだ。夕食には、どじょう汁が出た。 「ただいま、京...
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河原町 大場の久八

竜馬は京に入った。 このところ、世上騒然としはじめているため、京に滞在する者は、宿所の軒先に 何藩何某 と張り紙を出すようフレを出している。「ほう、千葉道場の坂本ではないか」剣客仲間で、竜馬の名は、高くなっていた。 「旦那、どうかご勘弁を」...
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会津小鉄1

(梅園さまのお屋敷に入って、南へ内塀を乗り越えていけば、三条様の屋敷に出られる) その時、藤兵衛の後ろから「おい、薬屋」と声をかけたものがいる。猿(ましら)の文吉といわれた目明しである「ワレァ、江戸もんやな。なぜ公卿屋敷の界隈をうろついとる...
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会津小鉄2

吉田山 藤兵衛が宿に戻ってきたのは翌朝である。「藤兵衛、お田鶴さまの元に密書を届けたか」「このとおり、お返事がございます」 都の花に嘯けば  月こそかかれ 吉田山という、京都旧第三高等学校の寮歌がある吉田山がお田鶴さまが竜馬へ指定した密会の...