浪人浮浪雲会津小鉄3 智福院 吉田山に竜馬が登った時には、すでに夕暮れで、紅葉の色が、斜陽を含んで血をしたたらせたように艶かしかった。ほどなくしてお田鶴様もあらわれ、炉の向こうに座った。「竜馬殿もいいお顔つきになられました」「お田鶴様は、一段と美しく御成遊ばしま... 1858.10.08浪人浮浪雲
浪人浮浪雲会津小鉄4 産寧坂 ふたたびお田鶴様から使いが来て、封書を手渡した。ー会いたい。という。指定の時刻は宵八時。ところも清水産寧坂の料亭「明保野」である。 「田鶴はこまるのです」「なぜですか」「そりゃ、女でございますもの」この時である。庭の植え込みが、わず... 1858.10.09浪人浮浪雲
浪人浮浪雲会津小鉄5 八坂の塔 女中が「お供が参っております」と告げた。土間には藤兵衛が控えている。「妙に虫の知らせがしたので、お顔だけ拝めれば、それでいいんです」「藤兵衛すぐ上がれ。お前のあとに人がつけている」 藤兵衛を表から逃すと、お田鶴とともに裏口から出た... 1858.10.10浪人浮浪雲