陸奥宗光 入塾

竜馬がゆく

(しかしあの伊達小次郎って若造だけは見どころがありそうだな)
竜馬は目をかけてやった。
齢は、龍馬より九つ下の二十歳である。
それにしてもこの若者は、紀州藩のお歴々に生まれていながら、なぜ
「土佐藩士です。そうしておいてください」
といつわるのか。

「おいおい」「私ですか」
「キミだ。確か伊達小次郎と申した」
「いいえちがいます。たったいま名を変えましたから。その名を呼んでください」
(ややこしいやつだ)と竜馬は思った。
「どんな名だ」
「陸奥陽之助宗光です」
「すごいなだなあ。なるほど、伊達は陸奥の性だから、そうしたのか。それはそうと、ここに菓子があるから来い」
竜馬は餌で鶏を呼ぶようにいったから、若者は怒気を発した。
「子供じゃありませんよ」

(竜馬がゆく4 P19)

この「政治なるものはアートなり、サイエンスにあらず」の文言は、1889年(明治22年)陸奥が、井上馨に宛てた手紙の文面です。
政治とは机上の空論ではダメなのだと。世の中のことを熟知して、人の心も捕まえることができる人でないと、政治というものはできないのだという意気込みが入っています。
イギリスとの不平等条約を徹底的に交渉する陸奥宗光の丹心ここにあり。

NHK 歴史秘話ヒストリア より

カミソリのような頭脳で、不平等条約改正に挑んだ明治の外務大臣・陸奥宗光。幕末のヒーロー・龍馬と出会い、型破りな交渉術を学んだ青春時代。だが、その運命は龍馬暗殺で急転し、ついには反乱の罪で投獄。危機を救ったのは、才色兼備の妻・亮子。外交の世界に飛び込んだ夫婦は、世界の強国と渡り合う。華やかな社交の裏で繰り広げられる情報戦。極限状態での駆け引きと緊迫のドラマ。不可能を可能にした最強交渉術の神髄に迫る!

NHK 歴史秘話ヒストリア 「最強交渉人、世界に挑む カミソリ大臣 陸奥宗光」にて特集2019.6.26