桶町の剣術道場

竜馬は、桶町千葉の門前に立った。
(なにもかも昔どおりだ)
と、門を仰ぎ、塀のくずれをなつかしくながめた。

玄関に立った。
「竜馬です」
というと、門弟がとりつぎに出た。竜馬にとって知らない顔である。
が、向こうはすぐ察したらしく
「あっ坂本先生」
と、挨拶もそこそこに奥へすっ飛んで行った。どうやら竜馬は、この道場ではすでに伝説上の巨人になっているようであった。

ふと、おうちの樹のむこう、すこし離れた塀際の一角が河原石で数珠輪にかこまれ、そこに桔梗がいっぱい植わっているのを見た。
(昔はあんな草はなかったな)
(竜馬がゆく3 P115)

桔梗