1854-10

江戸時代の常識・風習

三十本勝負_八百長

嘉永七年十月十六日 竜馬と重太郎は、道場の東西からそれぞれ竹刀を携げて中央に進み出てきた。 (この勝負、一本も竜馬に譲れぬぞ)重太郎は、下段に取った。 切っ先がセキレイの尾のように動いている。これが北辰一刀流の特徴であった。 竜馬は大上段で...
幕末の女性

コオロギの声_落籍

暑い夏が過ぎて、路地のあちこちでコオロギの声を聞くようになった頃、久しぶりに寝待ちの藤兵衛が道場にたずねてきた。 竜馬は重太郎の部屋を借りた。お冴の仇討ち以来である 「少し遠くに出かけていました」 「西国にいっていたのか」 「いいえ、出羽か...
江戸時代の常識・風習

狐につままれる_憑き物

嘉永七年十月十五日 (しまった)夜明けになって竜馬はひどくのどが渇いて目が覚めた。 「おめざめになりました?」 「ワシとしたことがあれしきの酒で?」 「坂本さま。約束通り男女の道を教えてあげたことをおぼえてらっしゃる」 「えっ」(知らぬわい...
江戸落語の世界(芸能・娯楽)

船宿_骨釣り

嘉永七年十月十四日 その日の夕刻藤兵衛のなじみらしい堀江町の船宿で酒を飲んでいた。鍛冶町の藩邸をでて千葉道場に戻る途中に船宿の者に呼び止められ、ちょき船に乗って連れてこられた。家並みに灯がともる頃、やっとふすまが開いた「藤兵衛か」「冴でござ...