いかん、戦じゃ

嘉永六年六月十日

「いかん、戦じゃ」
竜馬は走った。(あの船の様子では、品川を襲うぞ)
(えい、馬泥棒じゃ
背後で騒ぐ声がきこえたが、ふりむきもしない。
竜馬は、この時から、自分の人生に向かって飛ぶように駆けはじめたといったほうが当たっているだろう。

藩邸に帰ると、武市半平太が出てきて「黒船は捕まえたか」
「捕まらん」
「お前の不在のことは、組頭どんに上手に言い繕うちょいたゆえ、だまって隊務に励んじょればええ」
「ありがたい組頭どんは、えらい怒っちょったろう」
「藩邸では、もともと坂本竜馬ちゅう名前が、名簿から抜けちょったわい」
「べこのかぁにしちょる」

memo 与力 中島三郎助の憂鬱5

江戸湾を縦横に回る黒船に慌てて、香山がサスケハナ号に向かった。
「大統領の書簡は、前向きに検討をされている」と伝えることが精一杯で、贈り物を届けようとしたが、ペリーは他の船に乗船しているとして、乗船もさせてもらえなかった。